パーソナルトレーナーという仕事柄、お客様との関わりの中で食事の在り方について考えさせられる場面が多々あります。そんな中で固まってきた私自身の食事観について、今回はまとめてみようと思います。
さて、唐突ですがひとつ質問をさせて下さい。みなさんにとって「食事」ってなんなのでしょう?
1日3食ある「食事」。1年間で1000回以上も機会がある訳です。この「食事」という行為には何の意味があるのでしょうか?
ぱっと浮かんでくるのは、「栄養をとるための手段」なんて答えではないでしょうか。
まさしくその通りです。私たちの健康な生活は、日々の食事の上に成り立っています。
でもそれだけではありません。食事には、単なる栄養摂取だけにとどまらない社会的な役割があるんです。
食のあり方を人間と他の動物とで比較しながら食事を考えてみましょう。
ライオンなどの肉食動物は、捕獲した獲物をその場でパクリと食べてしまいます。これがチンパンジーやオラウータンになると、まれに集団内での食の分配が行われるようになります。そして我々人間まで進化が進み、家族などマスの単位で食事をするようになり、同じ材料でもそのまま食べるのではなく調理して食べ方を工夫するようになりました。
長きにわたる進化の中で、食の在り方の変化が私たち人間の社会性を育んできたとも言えるのです。
テーブルマナーに代表されるように、幼児の発達発育過程においても食事というのは礼儀や文化を学ぶ場であり、そしてなにより家族にとってのコミュニケーションの場です。食を通じて私たちは社会のルールを知り、そうして大人になっていくのです。
現代に生きる私たちは、獲物を捕らえて一人で食べる野生動物ではありません。社会性を持った『人間としての食事』を考えるのならば、食事が持つ栄養摂取以外の側面にも目を向ける必要があると思うのです。
ここで、昨今のダイエットブームとそれに伴うパーソナルトレーニングの普及、そんな中での食事のあり方に目を向けてみましょう。
ダイエットのために友人や家族間での外食の機会を絶ってしまう。家族の中にあっても自分だけ別メニュー。毎日同じものを淡々と食べ続ける生活。
仮にこれで完璧な栄養摂取が出来たとしても、この様な食事が人間として健全とは思えません。これでは食事のもつ社会的な側面が忘れられているような気がしてならないのです。
家族や友人と卓を囲み、お皿のチョイスを楽しんだり、料理にトライしたり、食材を通して季節の変化を感じたり。食の豊かさを享受する時、そこには想像力が働き、テーブルコミュニケーションの中では様々な感情の変化が生まれます。
本来、食事とは人生に彩りを与えてくれるものなのです。
毎日ある食事の機会を大切にしながら、より健康的な食事を志向していきたいものですね。
